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建物探訪011 (林芙美子記念館)

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さて今日は、3月に訪れた林芙美子記念館です。70年近く前に建てられた木造平屋建の建物です。
ちょうど季節も良く桜が満開でした。
この林芙美子記念館は旧林芙美子邸で設計は山口文象氏によるものです。

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林芙美子記念館の屋根。大きな樹木に囲まれた環境に瓦屋根が合う。


記念館入口のアプローチには家をつくるにあたってという林芙美子自身の言葉が書かれていて、その思い入れがよく伝わる文章です。
詳細は行かれた時、確かめてみて下さい。
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母屋の茶の間。今では茶の間と客間がリビングに変わっている。

この建物は母屋とアトリエ棟の分棟形式になっている。これは建てた時期が戦時下ということもあり、住宅のボリュームに規制がかかっていたためだそうだ。
今でも、法律や規制によって思うどおりにならなかったり、社会状況によってデザインが左右されるケースがある。
昔とは時代も変わっているので、一概には言えないけれど今後、原油高や地球温暖化など社会の不安定要素が多くある現代においても何がどうなるかわからない状況にあると思っていい。
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住宅には住まい手の物語がある。
一つ一つが違っていて当然である。
「林芙美子 巴里の恋」を読むとパリ留学中の様子や部分的ではあるが林芙美子の人物像を把握することで、この建物がどういう人の思いによって建てられたのかその意味を少しでも理解することが出来たように思う。

現代の様に選択肢が多く、材料も幅広く存在する中での住まいづくりではないため、どこかしら日本の原風景的雰囲気を醸し出す建物になっている様に感じた林芙美子記念館。
ただ一方で当時、こういう住宅に住めたのはごく一部ではないだろうかということも想像でき、日本人の住まいのあり方を設計者としてどうあるべきかを考えさせられた。

住宅に限らず、建物はその時代の社会状況、周辺環境、敷地条件、設計条件、施主の嗜好、設計者の嗜好、様々な要件が整って初めて建物のデザインが成立し、更にそれを造る人たちがいて初めて存在できる。

先人たちが残してくれた物に触れることはいい刺激にもなるし、設計活動の糧にもなる。
これからも出来るだけ多くの建物に触れて行きたい。
そして今後も長く残って行く建物を設計できるように心掛けて行きたい。

by zucky67 | 2008-06-07 13:06 | 建築

design studio bAOBab 鈴木のBLOG さいたま市で住宅を中心に手掛けている設計事務所です。住まいや建築、日々感じること、自分なりのプチハッピーライフを書き綴っています。


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