カテゴリ:建築に関する本( 2 )

せせらぎ日記 (1980年)

谷口 吉郎 / 中央公論美術出版

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この本は「雪あかり日記」(未読)の続編となる建築家谷口吉郎氏の遺稿となったヨーロッパ紀行記。
若き日の谷口吉郎氏が戦争への危機が切迫したヨーロッパに赴任し、主にベルリンの冬の思い出を綴ったものが「雪あかり日記」で、ベルリン以外の諸都市やドイツ以外の国の旅の思い出を綴ったのがこの「せせらぎ日記」ということだ。(当時ドイツまでは船で1ヶ月もかかったようだ)
内容は建築論ではないが、谷口吉郎氏がヨーロッパの建築を見て回り、そこで感じた印象、日本文化との対比などは読んでいて参考になる。しかしなんといっても一建築家が肌で感じる刻々と迫ってきている戦争への緊迫感は臨場感を感じ、人は生まれてくる社会状況によってその運命というのは決まってくるのだと感じた。
特に建築は社会事情というのにも左右される部分も多く、当時のドイツでは20世紀初頭流行したモダニズム建築は弾圧を受け、建築家は次々と海外へ亡命しなくてはならない状況にあった。
今の日本のように平和な時代にあっては想像できない。
またコルビュジェに会ったときのエピソードで「満州国にでも仕事はないだろうか」(当時の満州国は国際連盟で否定された新興国であった)ともちかけられたと当時世界的建築家であっても仕事を様々な方面で求めて行かなくてはならない状況下にあったと書いている。
最後の方では戦争がいつ始まるかわからない中、ヨーロッパを脱出していくまで毎日の心境を書き綴っている。
実際の戦争を知るわけではないけれど、戦争は個人ではどうすることも出来ない。そして戦争はすべてのものを破壊してしまう。
最後の方では「私が自分の見た美しい建築のうち、もう黒い残骸となっているものがあるかもしれぬ。そう思うと頭は重い。」と語っている。

今の日本では戦争はないが、再開発などによって古いものが壊され、次々と新しいものに変わって行く様子を目の当たりにする。当然良くなる面があるものの、一方で古き良き風景が次第になくなりそこに根付いた文化も失われて行く。
そういう仕事に携わっている建築家は少しでも何か記憶の残る場所をつくることを考えていってほしい。これは他人事ではなく住宅を設計することでもいえることだろう。

二人の造家師が住まいを提案する design studio bAOBab


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by zucky67 | 2010-01-24 12:55 | 建築に関する本

吉村順三のディテール―住宅を矩計で考える

吉村 順三 宮脇 檀彰国社

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建築家吉村順三氏の住宅20件をセレクトし、矩計図とディテールからその魅力をさぐる。住宅設計をしている人にとっては必携書と言える。

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by zucky67 | 2005-04-12 00:52 | 建築に関する本

design studio bAOBab 鈴木のBLOG さいたま市で住宅を中心に手掛けている設計事務所です。住まいや建築、日々感じること、自分なりのプチハッピーライフを書き綴っています。


by zucky67
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